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修士と同等以上の業務実績を担う防災教育の「研究計画書」

投稿日時:2020/03/21 08:04


①研究テーマ 防災はあたり前な社会の実現を目指す新たな防災教育の方策

背景・目的・対象と方法・期待される成果・文献など

②研究の背景

 近年、我が国には地震や台風などによる大規模災害が頻繁に発生していることから、防災の必要性は非常に高いと考えられる。しかし、私たちの防災への知識や備えについては十分とは言えない。今後も生きていく中で、大規模災害に遭遇することが想定されることから、防災は特別なテーマではなく、衣食住や健康、衛生と同じレベルで、すなわち日常の留意事項になるように一般化するのが理想と考えられる。そう言った社会になるために、新たな防災教育の方策が必要であると考えられる。

これまで私たち大人は、学校教育の中で、防災の知識を学ぶ機会は不十分であった。したがって、今の大人は、防災の知識や意識について個人差が大きいのである。学校では理科のなかで、地震のメカニズムや気象について学ぶことはあっても、防災教育として具体的に身を守る術や助け合いを学ぶことはなかったのである。このことについて、現在、各学校で行われている避難訓練を例に取ることでもわかるのである。学校で行われる避難訓練は、校内における避難経路や避難場所を知るうえでは必要な学習である。しかし、生徒は何も思考せず、先導者の指示に従うだけであり、先導者は台本通りに生徒が動くことを良しとするだけである。もっと言えば、校庭に整列したあとはどうしたらよいかの学びが無い。また、雨の日には、避難訓練を中止にするなど、実践的なものとは言い難い。子どもたちは、いつ、どこで災害に遭遇するかわからない。いつ、どこで災害に遭遇しても適切な避難行動ができるようになるためには、これまでの画一的な避難訓練では難しい。自分の身は自分で守ることができるようになるために、自分で考えて行動する力が必要である。尚且つ、他者が困っていたら助け合いを学べるような防災教育教材の必要性を、私は学校の現場で従事する教員として感じていたのである。

しかし、大人も子どももどんなに必要性が理解できていても、興味も関心もない事項は、なかなか定着はしない。学んだことを定着するためには、「楽しさ」を「体験」として実感する必要がある。楽しかった体験は心に残り、忘れづらい。しかも楽しいことは、またやってみたいと思わせ、仮に忘れても楽しかった経験はすぐに思い出すことができるのである。したがって、防災教育には、「楽しさ」と「体験」が融合した学習経験ができる教材やアクティビティが必要と考えられる。そして、防災が一般化するために、意識的に防災を学ぶ必要があるのである。例えば、算数の九九が当たり前なのは、誰もが小学生の時に九九を学んでいるからであるのと同じになるように。

 

⓷研究の目的

 北海道の冬季における避難生活について課題が未解決なことから、冬季避難生活を想定した防災訓練として、アウトドアの知識、技術、装備を応用した「防災冬キャンプ」と、自分で考えて行動する避難訓練をゲーム化した「ひなんくんれんゲーム」の演習を行い、それぞれがもつ「楽しさ」と「体験」を融合した新しい防災教育としての可能性と課題を検証する。

 「防災冬キャンプ」とは、2011311日に東日本大震災が発生したことから、冬季の北海道で大規模災害が発生したことを想定して、寒さの中、長期化する避難生活を、自助として自分たちが自主的に家族を守っていくための方策である。キャンプという「楽しさ」と「体験」を伴う、自然体験活動を応用したアクティビティにおける知識・技術・装備を検証する。

一方、「ひなんくんれんゲーム」は、避難訓練の疑似体験であり、レクリエーション要素から「楽しさ」と「体験」を伴う避難行動である。ねらいが二つあるアクティビティであり、一つは、大規模地震時に自分の身を守る術を身に付けることである。二つ目は、助け合いを学ぶことである。

小学生低学年から、発達段階に応じて、自助➞共助➞公助と、小学生が10年後に社会人となるころには、防災が一般的になるように学びを重ねていく、小学生からの防災教育の基礎となるアクティビティを検証する。

同時に、子どもたちには何のために防災を学ぶ必要があるのかを理解する必要がある。なぜ、自分の身を守る必要があるのか。それは、自分の身を守ることが、他者を守る(救う)ことにつながることだからである。自分で、自分の身を守ることができることで、救助者は、他の救助が必要な人のもとに向かうことができる。もし、あなた(自分)に救助が必要なら、救助者は、あなたを救助することで他の救助が必要な人のもとへ向かうことができなくなるのです。すなわち、あたたが、自分で自分の身を守れることは、他者の命を守る(救う)ことになることを理解する必要があるのである。

 

④研究の対象と方法

〈対象〉

 「防災冬キャンプ」は、冬季の北海道で、実際の避難生活を想定して、冬季営業のキャンプ場と住宅街の公園においてテントやシュルターを設営して演習を各一回、合計2回行う。被験者は、一般の人を募集して行い、アンケートと取材といった社会調査から、有効性と課題をあきらかにする。

 「ひなんくんれんゲーム」は、小学生から大人に対して「ひなんくんれんゲーム」の演習を行う。小学生から大学生までは各学校で「ひなんくんれんゲーム」の演習を実施する。ゲーム終了後、ふりかえりをアンケートと取材により、ゲーム前とゲーム後には、どのような意識の変容があったか。さらに行動の変容があったか。要配慮書がいる中での避難行動や自分自身が要配慮者となった時に適切な避難行動ができたか。どのような気づきがあったか、課題はなにかをあきらかにする。

〈方法〉 

「防災冬キャンプ」

・冬季のキャンプ場と住宅街の公園で演習を実施する。住宅街の公園は江別市内を予定。

「ひなんくんれんゲーム」

・一般(子どもから大人を対象。40名。7月防災イベントそなエリア東京、10月ぼうさいこくたい

 広島市)。一般は防災イベントに来場した人を対象とする。

・大学生(18歳~22歳対象。40100名。北海道教育大学釧路校の教授、学生を対象)

・特別支援学校(自身が勤務する特別支援学校高等部生徒40名を対象)

・小学校(低、高学年対象。40名)

・過去に「ひなんくんれんゲーム」を実施した演習の報告書

⑤期待される効果

・「防災冬キャンプ」と「ひなんくんれんゲーム」は、どちらも「楽しさ」と「体験」を融合した体験型の学習であり、主体的で対話的な深い学びを実践する学習活動として、今後、学校教育の中で実践される新たな防災教育の原体験としての教材となる可能性がある。

・大規模災害時においてライフラインの供給停止による不足時に、知恵と行動で補い、希望を持ち生き抜く力を身に付けることが期待できる。

・小学生の低学年から理解できる防災教育教材である「ひなんくんれんゲーム」は、それまでは、子どもだから助けられる側であるという意識を、助ける(介助または先導)ことができたことから、子どもであっても「助けることができる」という意識の変化が促される。このことから防災教育の学習を積み重ねた子どもが大人になるときには、「防災はあたり前」となっている社会の実現が期待できる。

・「ひなんくんれんゲーム」の中では、実際に人を助ける成功体験から自信を持ち、災害時だけでなく、普段の生活の中で、困っている人がいるときには手助けしようという心が育まれることで、広義の人や社会への貢献が期待できる。

・災害時は人任せにせず、自分で考えて行動する「生きる力」が身に付くことが期待できる。

・防災教育の原体験となり、災害時だけでなく、普段から困ったときはお互い様の精神が身に着く事 

 が期待できる。

・小学生から「楽しさ」と「適切な避難行動を身に着けることができる」新たな防災教育教材となる

 可能性がある。

・なにより、災害に負けない、明るい未来が期待できる。

⑥文献

・『避難シミュレーションゲームを用いた防災啓発』末澤弘太・城新伍・木村泰之・浜大吾郎・正部

 洋典・中野晋・佐藤章仁

・『児童生徒に対する実践的防災訓練の効果測定 -緊急地震速報を活用した抜き打ち型訓練による

 検討』

秦康範1・酒井厚2・一瀬英史3・石田浩一3

・『アウトドア・レジャーを北海道の冬季防災に生かす「アウトドア寒冷地防災学」を構築する』

藤澤 誠

・『助けられる人から助ける人になる「ひなんくんれんゲーム」を提案する』藤澤 誠



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